洗いもしみ抜きと一緒

今週は、洗浄試験で、2社の工場を訪問させて頂きました。

1社目は、調理用白衣を洗っている工場。

前掛け、調理用白衣上下のシミが落ちないとのことで

困っていらっしゃいました。

最近、他社からこの仕事が回ってきたとのことで、

今までの汚れがかなり蓄積しています。

それと、恐らく、次亜塩素酸ナトリウムを使っていたとみられる、

生地の脆化と黄ばみも見られます。

すべて白物なので、もちろん従来通り

次亜塩素酸ナトリウムを使っても良いのですが、

傷んでいる白衣が多いのと、塩素ヤケによる黄ばみをあまり出したくない。

それに、水洗機にも良くないので正直、次亜はなるべく使いたくない。

そこで、過酸化水素による処方をご提案させていただきました。

合わせて、洗浄プログラムを少しだけ工夫しました。

汚れ落とし=洗浄としみ抜き=漂白を分けて行う方法です。

しみ抜き勉強すると、まずは下のような図を必ず見ると思います。

洗いもしみ抜きと一緒

※このイラストは、東京都クリーニング生活衛生同業組合
ホームページより引用させていただきました。

この図の順番にしみ抜き作業をしていかないと、

本来、もっと簡単に落ちるはずだったしみが落ちなくなる場合があります。

水洗機で洗うときにも、この手順を踏まえて適切な洗浄剤を選定し、

適切な洗浄プログラムを組まなければ

汚れが落ちにくくなってしまいます。

そこで、予洗と本洗の2段階洗浄でテストさせていただきました。

洗剤も汚れに見合った質の高い界面活性剤が配合されたものを、

加えてタンパク分解酵素と油脂分解酵素を配合したタイプの、

厨房白衣やコックコート専用の洗剤を選定。

油脂汚れを乳化分散させるために、液体ビルダーを併用しました。

予洗で50℃×10分洗浄した後、排水せず60℃まで昇温して、

過酸化水素を投入。引き続き、洗浄+漂白を行いました。

同時に隣にある同機種で、全く同じ洗浄プログラム、同じ洗剤使用で、

ただし、漂白剤を次亜塩素酸ナトリウムに変えて洗ってみました。

さて、洗い上がりはどうでしょう!?

過酸化水素を使用した方が、全体的に白度が上がっているようです。

両者とも、酷いシミ、色素が定着しているようなシミは残っていますが。

人工汚染布での比較でも、過酸化水素の方が総合的に良い結果が出ました。

次亜塩素酸ナトリウムより過酸化水素の方がおちるの!何故?

これは、やはり酵素の力の差が出たのかな…と思われます。

予洗10分は同条件、その後本洗20分でまだまだ、酵素が頑張ってくれたお陰です。

次亜塩素酸ナトリウムを使用すると、予洗までは頑張ってくれた酵素が、本洗の段階で、

次亜塩素酸ナトリウムが投入されてしまうことで、すべて死んでしまいます。

油性の膜を洗剤とビルダーで、その下のタンパクの硬い殻を酵素で分解しないと

タンニン系や色素によるシミに洗浄剤や漂白剤がたどり着けません。

どうでしょうか?

上のイラストの通りですよね。

先ほどの洗浄でどうしても落ちなかったものだけは、

『ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム』商品名で言うと、

『ハイライト60AG(日産化学工業)』あるいは

『サラシコールG(エビス薬品)』

という薬剤で再洗い、しみ、汚れはほぼ無くなりました。

『ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム』は、繊維の脆化がほとんど無い、

画期的な塩素剤です。

ただし、あくまでも塩素ですのでご使用されるのは白物に限定されます。ご注意ください。

もう1社の方は、ポリエステル80%、綿15%、ナイロン5%の

ブラウスの襟、脇の下の黄変と黒ずみが落ちないという事例。

汚れの性質が異なりますので、洗剤は違うものに変えました。

もちろん、タンパク分解酵素と油脂分解酵素配合の洗剤ですが…。

洗浄プログラムはほぼ同様。ただし、予洗の温度を40℃にして、

タンパク汚れ、皮脂汚れにしっかり酵素が働いてもらうようにしました。

ここで、皆さんの中にJは、

ポリエステル80%前後のブラウスなのに、何でそんなに落ちないの?』

という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

確かにポリエステルだから、汚れは落とし易いはずなんですが…

ところが、これが意外と曲者なんですよね。(-_-;)

普段のこのブラウスのメンテナンス(洗濯)の管理状態は、ほぼ無管理と言って良い状態です。

お洗濯は着用している社員の自己管理に任せているようで、通常はクリーニングに出していない。

ほぼ100%家庭で洗っているだけと思われます。

それが、人事異動の時や、衣替えの時にまとめてクリーニング工場へ持ち込まれる。

皆さん、ご存知のように、ポリエステルの混紡率が高い衣類は、

普段から、しっかりと洗っておかないと、後で泣きを見ます。

ポリエステルは親油性の繊維ですから、

特に、油性汚れ(皮脂汚れや大気中のカーボン質の汚れ)が逆汚染しやすく、

一度逆汚染するととにかく落ちにくくなります。

また繊維の中に入り込んだシミは、なかなか出てきません。

高温で高アルカリにしても、ポリエステル繊維は膨潤しにくいからです。

シワが取れにくくなってしまうので、そもそもポリエステルはあまり高温にできないですし…。(汗)

長くなってしまいました。もっと色々と細かいことをお伝えしたいのですが…。

要は…その繊維の持つ特徴、着用状態と汚れの状態をしっかり把握して

洗浄理論に基づいた洗い方を心がけることが大切だということでした。

ここまで読んでいただいた皆様、最後までお付き合いいただきまして誠にありがとうございました。m(__)m